平成26年度土木学会関西支部技術賞

掲載の記事・写真・図表などの無断転載・使用を禁止します。
著作権は公益社団法人土木学会関西支部および作者に帰属します。
各業績のより詳細な説明は「Microsoft Internet Explorer」でご覧になることをお勧めします。

■ 受賞者 ■
■ 受賞業績内容説明 ■

技術賞
狭小ヤード・都市内重交通下でのジャンクション建設(守口ジャンクション)
西日本高速道路株式会社関西支社 大阪高速道路事務所
阪神高速道路株式会社 建設事業本部大阪建設部
近畿自動車道紀勢線(江住地区)長大法面の長期安定性リバウンド評価技術
国土交通省近畿地方整備局 紀南河川国道事務所 
大成建設株式会社 関西支店
応用地質株式会社 関西支社
大深度地下使用法を全国初適用した大容量送水管の整備〜奥平野工区〜
神戸市水道局
安藤ハザマ・西武・不動テトラ特定建設工事共同企業体
JFEエンジニアリング株式会社
 都市部における超近接無導坑メガネトンネルの建設 −名塩道路八幡トンネル工事−
国土交通省近畿地方整備局 兵庫国道事務所
株式会社鴻池組
寝屋川流域下水道 竜華水みらいセンター整備事業
大阪府東部流域下水道事務所
見草トンネル工事におけるCIMシステムの開発と適用
国土交通省近畿地方整備局 紀南河川国道事務所
株式会社大林組 見草トンネル工事事務所

技術賞部門賞
大阪府営泉佐野丘陵緑地における地域、企業との連携による公園づくり
大阪府岸和田土木事務所
紀勢線那智川橋りょう架替工事 〜急曲線桁(下路SRC連続桁)の架設〜
西日本旅客鉄道株式会社
大鉄工業株式会社
ジェイアール西日本コンサルタンツ株式会社

▲ページの頭に戻る


業績内容説明
<技術賞>
狭小ヤード・都市内重交通下でのジャンクション建設(守口ジャンクション)
西日本高速道路株式会社関西支社 大阪高速道路事務所
阪神高速道路株式会社 建設事業本部大阪建設部
 守口ジャンクションは、周辺道路の渋滞緩和や高速道路とのネットワーク化により大阪中心部と京都圏のアクセス向上を図るため、近畿自動車道と阪神高速12号守口線を橋梁で直結した構造である。
 架設現場は大阪中央環状線などの都市内重交通路線、モノレール、浄水場や民家等が隣接し、場所的・時間的制約が非常に厳しく、1.ソケット形式基礎や既設RC橋脚を鋼製梁で延長する複合構造の採用など、狭小空間でのコンパクトな構造設計、2.曲線桁の連続送り出し架設や、鋼桁一括架設、大型トラベラークレーンによる主桁架設、パワーリフトを用いた鋼製橋脚架設など狭隘なヤードでの様々な工法による時間短縮、3.大阪中央環状線を通行止めではなく対面通行にしたことや、高さ制限を超える車両はレーザービームで判別し、進入前に迂回させる等の交通運用計画、4.現場見学会や地域清掃等の地域貢献などの取組みにより課題解決を図り、平成26年3月23日・同年7月30日に開通した。
 ヤード・都市内重交通下の厳しい条件のもと、多岐にわたる関係機関及び多数の工事受注者等と綿密に連携・調整を図りながら、新技術・新工法を駆使して難工事を完遂したことを高く評価された。
守口ジャンクションの全景
守口ジャンクションの全景
「狭小ヤード・都市内重交通下でのジャンクション建設(守口ジャンクション)」のより詳細な説明を見る

▲ページの頭に戻る

<技術賞>
近畿自動車道紀勢線(江住地区)長大法面の長期安定性リバウンド評価技術
国土交通省近畿地方整備局 紀南河川国道事務所
大成建設株式会社 関西支店
応用地質株式会社 関西支社
 近畿自動車道紀勢線江住地区の施工箇所周辺に分布する地質・四万十帯は、斜面崩壊や地すべり災害の履歴があることから、施工中および供用後の安定性が懸念された。特に、ランプ建設のため採用された13段に及ぶ長大切土法面は前例がなく、リバウンドによる長期安定性への評価が課題となった。
 そこで、原位置で実施した孔内試験や施工時の計測結果から得られた「変形特性のひずみ依存性」を地山材料の非線形モデルに組み込み、より現実に近い評価を行えるようにした。また、一般的に切土施工では使用されることがない三成分地中変位計を用いて、実際の地山挙動を予測解析にフィードバックすることにより、最終法面形状での長期安定性を評価する技術を確立した。
 これらの予測手法により事前に補強区間の決定ができ、手戻りなく施工を行うことが可能となり、災害時など国道42号の通行止め時に代替路線となる重要な紀勢線の早期供用に役立つことが期待される。
 本業績は、実際の地山の挙動を把握し、長大法面完成時の長期安定性を予測し、対策工にフィードバックさせたものである。従来の技術を総合的に組み合わせた技術であり、今後の長大切土法面施工の調査・設計・施工・維持管理の考えの一案となる技術を確立した点を高く評価された。
長大切土法面(13段)の施工状況
長大切土法面(13段)の施工状況
「近畿自動車道紀勢線(江住地区)長大法面の長期安定性リバウンド評価技術」のより詳細な説明を見る

▲ページの頭に戻る

<技術賞>
大深度地下使用法を全国初適用した大容量送水管の整備〜奥平野工区〜
神戸市水道局
安藤ハザマ・西武・不動テトラ特定建設工事共同企業体
JFEエンジニアリング株式会社
 大容量送水管整備事業は、平成7 年1月17 日に発生した阪神・淡路大震災の復興プロジェクトの一環である。震災直後の道路閉塞や交通渋滞により給水タンク車等による応急給水が十分にできなかった教訓を踏まえ、大容量送水管に高い耐震性能と大容量の貯留機能を送水機能に付加した市街地の地下深く通る大容量送水管の整備をした。これは前例のない画期的な技術で、現在では一般名称化され全国的に広がっている。
 奥平野工区では、全国で初めて「大深度地下使用法」を適用し、工事延長の短縮やコスト縮減を図るとともに、法適用区間のトンネル覆工構造体の中詰材に、曲げ引張強度不足を補うための「合成樹脂繊維補強コンクリート」を採用するなどし、大深度・高水圧下での厳しい施工条件を各種技術で克服した。また、断層横断部では「断層用鋼管」を全国で初めて採用し、断層変位が生じた場合でも通水機能の維持が可能となる。
 本業績は、最新の技術や法律を活用した全国初となる先駆的な取組み等により、効率的かつ効果的な整備を実施し、災害時の被害の軽減等に大きく貢献するものであり、大深度土木技術の進展に著しい貢献をしたこと、また、工事見学会等を通じて土木施設の意義や魅力を伝えていることを高く 評価された。
大容量送水管整備事業の概念図
大容量送水管概念図
「大深度地下使用法を全国初適用した大容量送水管の整備〜奥平野工区〜」のより詳細な説明を見る

▲ページの頭に戻る

<技術賞>
 都市部における超近接無導坑メガネトンネルの建設 −名塩道路八幡トンネル工事−
国土交通省近畿地方整備局 兵庫国道事務所
株式会社鴻池組
 国道176号名塩道路八幡トンネルは、交通渋滞の解消、交通の安全確保及び異常気象時の通行規制区間の解消などを目的とした、上下線の離隔が約1mで近接する超近接無導坑メガネトンネルである。本トンネルは、都市部で高速道路やマンションなどの施設に近接するため、最新技術を駆使し、周辺環境の保全と安全管理を確実に実施し施工した。
 高速道路に近接した起点側坑口部の切土時には、斜面の変位を現地でリアルタイムに光の色で警告する「計測結果の見える化技術」を採用し、作業の安全性の向上を図った。また、トンネル施工では、有限要素法による影響予測解析を行うとともに、CIM(Construction Information Modeling)を導入したことにより、前方切羽を予測しながら必要な箇所に適切な補助工法を採用するがことでき、地表面の沈下や地中変位を基準値内に制御した。
 一方、マンションに近接する終点側坑口部の切土時においては、住環境への配慮として騒音低減効果を図る目的でエキセントリックリッパーを導入し、周辺環境の保全を図った。
 本業績は、都市部で保全対象となる施設に近接したトンネルの施工にあたり、最新技術である「CIM」や「計測結果の見える化技術」等を駆使することにより種々の課題を克服し、都市トンネル構築技術の進展に貢献した点を高く 評価された。
名塩道路八幡トンネル工事 約1mの離隔である上下線を併進掘削している状況
名塩道路八幡トンネル工事 約1mの離隔である上下線を併進掘削している状況
「 都市部における超近接無導坑メガネトンネルの建設 −名塩道路八幡トンネル工事−」のより詳細な説明を見る

▲ページの頭に戻る

<技術賞>
寝屋川流域下水道 竜華水みらいセンター整備事業
大阪府東部流域下水道事務所
 竜華水みらいセンターは、寝屋川南部流域の下水処理能力を増強し、高度処理化を推進する第二の処理場として「大阪竜華都市拠点地区(八尾市)」に平成8年都市計画決定された。
 当地区は、JR大和路線久宝寺駅前に隣接する土地区画整理事業と一体的に整備が行われたが、公益文化地区に立地しているので、通常、地上に構築される水処理施設を完全地下式とし、上部にスポーツクラブや生活利便施設等の商業施設を誘致して、公益文化地区としての魅力を確保している。さらに商業施設に併設して下水高度処理水を活用したせせらぎ水路と緑道の整備を行い、駅前の賑わいと潤い空間の創出に貢献している。
 狭小な施工ヤードで長さ286m、幅84m、深さ22mもの水処理施設を完全地下化するにあたっては、剛性の高い地中連続壁工法と3,000本以上のアースアンカーを併用した。また、JRの軌道への影響を把握するため、連続自動計測システムによる地盤の変状監視を行い列車の運行に影響を与えることなく安全に施工を行った。
 本業績は公益文化地区で、駅前に建設された下水処理場であるため、水処理施設を完全地下式にし、上部にスポーツクラブ等を立地することで駅前地域の魅力アップに貢献した新しい処理場のあり方を提案したことを高く 評価された。
奥が竜華水みらいセンター管理棟、手前が誘致した民間の商業施設、左に見えるのが高度処理水を活用した「竜華せせらぎ緑道」、図は地上施設と地下施設を表した断面図
奥が竜華水みらいセンター管理棟、手前が誘致した民間の商業施設、左に見えるのが高度処理水を活用した"竜華せせらぎ緑道"、図は地上施設と地下施設を表した断面図
「寝屋川流域下水道 竜華水みらいセンター整備事業」のより詳細な説明を見る

▲ページの頭に戻る

<技術賞>
見草トンネル工事におけるCIMシステムの開発と適用
国土交通省近畿地方整備局 紀南河川国道事務所
株式会社大林組 見草トンネル工事事務所
 CIMシステムは「3次元モデルを利用して、情報を共有・活用することにより、建設生産システムの効率化・高度化を図るもの」と言われ、本工事は、着手時から当システムをトンネル施工に導入した全国初のプロジェクトである。
 トンネル工事では施工情報を再評価しながら最適な設計・施工法を選択するが、関係者の技術力の差等により合意形成に時間がかかり工程が遅延したり、施工データの維持管理の引継ぎに課題があった。
 このため、設計情報、施工情報、及び品質・出来形情報を統合した3次元モデルを構築して情報を可視化し、イメージを共有して施工の効率化を図った。また、3次元モデル作成に必要なデータは、既存のデータと紐付けすることで迅速化・省力化を図れ、遅滞なく3次元モデルに反映することが可能となった。
 本工事において開発したトンネル工事おけるCIM標準モデルシステムは、簡単で使いやすく分かりやすい3次元統合モデルで、施工に伴い情報が蓄積していく成長型CIMモデルとなった。
 本業績は、CIMを活用することで関係者の合意形成が迅速化し、施工速度が向上したこと、及び施工から維持管理への連携強化を図り、ストック型社会への転換に向けた社会資本整備に役立つ技術を開発したことを高く 評価された。
構築したCIMシステムの概要(見草トンネル)
構築したCIMシステムの概要(見草トンネル)
「見草トンネル工事におけるCIMシステムの開発と適用」のより詳細な説明を見る

▲ページの頭に戻る

<技術賞部門賞(喜ばれる技術)>
大阪府営泉佐野丘陵緑地における地域、企業との連携による公園づくり
大阪府岸和田土木事務所
 泉佐野丘陵緑地は、関西国際空港対岸の山の辺に、大阪府では約20年ぶりに、21世紀になり初めてオープンした大阪府営公園である。本公園の整備にあたっては、計画の段階から、府民、企業、学識者、行政が同じテーブルにつき、協働で事業を進める「シナリオ型公園づくり」という新しい都市公園のつくり方、使いこなし方を実践した。
 平成19年に運営会議を立ち上げ、行政が行うインフラなどの基盤整備と企業グループが支援した大規模な資機材を活用し、府民ボランティア「パーククラブ」が手作で公園づくりを進め、平成26年8月に全体計画の面積約75haのうち約13haをオープンした。ボランティアや企業グループは現在も大阪府と共に、公園づくりやイベント運営などに関わり、継続した事業展開が行われている。
 この事業手法は、参画主体の満足度の向上にとどまらず、地域の活性化や企業の社会参画等を促す仕組みづくり、また、来園者に対するサービス向上にも寄与し、持続可能な「新たな公共事業モデル」として注目を浴びている。
 本業績は、地域、企業、行政との協働による公園づくりを通して、府民サービスの向上、地域の活性化、企業の社会参画等を促す仕組みづくりを構築したことを「喜ばれる技術」として評価された。
公園内の様子:地域、企業、学識経験者、行政らが同じテーブルにつき、事業を進めた
公園内の様子:地域、企業、学識経験者、行政らが同じテーブルにつき、事業を進めた
「大阪府営泉佐野丘陵緑地における地域、企業との連携による公園づくり」のより詳細な説明を見る

▲ページの頭に戻る

<技術賞部門賞(成し遂げた技術)>
紀勢線那智川橋りょう架替工事 〜急曲線桁(下路SRC連続桁)の架設〜
西日本旅客鉄道株式会社
大鉄工業株式会社
ジェイアール西日本コンサルタンツ株式会社
 紀勢線那智川橋りょうの架替工事は、和歌山県が実施する「二級河川那智川災害復旧助成事業」の一環として那智川を渡河する橋りょうの架替えを行ったものである。
 本工事では、短期間(約2年半)で新橋新設、旧橋撤去、護岸工事を実施し、そのうち、河川内の工事は非出水期に施工するという非常に厳しい施工条件のため、工期短縮効果の高い工法が求められたことから、出水期に施工が可能な曲線送出し工法を採用した。
 桁構造は送出し架設を前提として、桁高を低く抑え、塩害環境にも配慮しSRC構造を選定した。急曲線桁(R=430)の曲線送出し架設は、鉄道橋として過去の事例が少なく技術的課題も多かったが、あらかじめ架設時の管理項目・管理体制を設定し施工したため、平成26年7月に無事に架設工事を完遂できた。
 また、SRC桁にはひびわれ抑制を図るため鋼繊維補強コンクリートを採用したが、主桁(I型)部の充填性確保が懸念されたため、実物大模型による施工実験を行い、その結果を反映した高品質なSRC構造物が構築できた。
 本業績は、厳しい施工条件のなか、急曲線桁(R=430)の曲線送出し架設を完遂し、鋼繊維補強コンクリートを用いた高品質なSRC桁を構築したことを「成し遂げた技術」として評価された。
供用開始(H26.12.14)した那智川橋りょう
供用開始(H26.12.14)した那智川橋りょう
「紀勢線那智川橋りょう架替工事 〜急曲線桁(下路SRC連続桁)の架設〜」のより詳細な説明を見る

▲ページの頭に戻る


支部トップページ | 技術賞のページ